「正しい街」2

ゲームセンターとは直接的な関係無い話なのだが、私と同人誌(即売会)との係わり合いをここで少し説明しておく。前出の通り、鹿児島大学付属中学校への通学を断念した姉は、その後勉学の代わりに趣味のマンガ創作に傾倒していった。中学校では同好の士を募り、マンガ同好会のようなものを設立していた。(これには写真など他の文化部活動を行う部員も含まれていた)
高校に進学し、親父が東京へ単身赴任すると姉は、通っている女子校の同級生達で同人誌即売会主催団体を立ち上げていた。即売会というのは、机や椅子の設営、人員の整理などの男手も必要であったので私と私の不良仲間もそれを手伝うことになった。当然、私の不良仲間にはまったくオタク趣味に理解が無い者も居たが、「スタッフ弁当が食える」と「女の子が集まるイベント」という甘言をエサにした。*1その流れで、当時の福岡市内における同人誌即売会主催団体最大手、「ACST(現コミックネットワーク)」等に私も顔を出すようになった。
当時は「キャプテン翼」「聖闘士星矢」によるいわゆる「やおいバブル」の真っ只中で、各地の即売会主催団体は爆発的に増加したサークル参加申し込みを処理するため、事務作業の効率化を迫られていた。東京の「コミックマーケット準備会」では故岩田次夫氏によって事務作業の電算化が進められていたが、福岡ではそれがシステムソフト(当時)の石川淳一氏によって進められていた。余談であるが「現代大戦略大戦略シリーズ)」の生みの親としても知られる石川氏は、その後独立して「同人誌即売会をやろう!」というゲームを手がけている。姉は、システムソフトから払い下げ品のPC-98を譲り受け、私がそのPC-98にてLotus1-2-3と一太郎を使用しサークルの分類、住所録の整理を行うことになった。幸いにして、私の通っていた工業高校の図書館にはこれらのビジネスソフトを使いこなすための資料が豊富にあり、またそれに精通した教員も居た。それとこれは私見だが、同人誌即売会の運営というのは、今も昔もデータベース運用が要だと思う。
当時、メインスタッフが高校生で占められている即売会主催団体というのは珍しく(現在もそうかもしれないが)、姉の団体はアニメ雑誌「OUT」の取材を受けたりもしていた。私がいわゆる「オタク業界」に本格的に足を突っ込むことになったのは、こうした姉の影響によるところが大きかった。

*1:実際、宮崎事件以前の同人誌即売会は女性がほとんどで、エロ本を求めに男のオタクが集まりだしたのは宮崎事件が大々的に報じられ、「コミケに行けば無修正のエロマンガが買える」というウワサが流布してから顕著になった。そういう意味で、現在のいわゆる「萌えオタ」と呼ばれる連中は「宮崎勤の落とし子」であると私は思う。